私は社会人ドクターに挑戦し、3年半で無事修了しました。
また、取得した博士号を活かして転職し、キャリアアップも実現することができ、とても価値のある自己研鑽であったと強く思っています。
ただ、社会人ドクターには、
・始めるまでの苦労
・博士課程での苦労
・博士取得後のキャリアの苦労
がつきもので、私も例外なくその苦労を味わいました。
その原因として「情報不足」であったと考え、
その経験から、社会人ドクター挑戦に関する情報をまとめたサイト
を作ることにしました。
まずこのページでは、私の3年半の社会人ドクターの全容を公開し、
そのうえで、振り返りをすることで、これから社会人ドクターを目指す皆さんに
・社会人ドクター全体について
・気をつけるべきこと教訓
を紹介したいと思います。
①社会人ドクターの魅力と壁
社会人ドクターとは、会社等の組織に在籍し働きながら、大学の博士課程にも在籍し、博士号の取得を目指して学び研究に取り組む、社会人兼学生としての学び方となります。
私自身も、民間企業、いわゆる大手日本企業の、理系総合職としてプラント設計や研究開発プロジェクトに関わりながら仕事をしつつ、
入社5年目から大学の博士課程に入学し、学生としての学習・研究活動を並行して行なっていました。
社会人ドクターには大きな魅力と壁があります。
・専門性の獲得
・キャリアアップ
・肩書きの獲得
のような大きな魅力があり、修士卒で就職した人の多くが一度は社会人ドクターを意識することがあるのではないかなと思います。
(私自身は博士進学と迷いつつ就職した経緯があったので、ずっと博士への憧れがありました。。)
ただ、実際に社会人ドクターをやりたいと思っても、
・仕事と研究の両立はかなりキツイらしい
・そもそも会社が行かせてくれるのか?無理じゃないか
・実際、博士って価値があるのか?
という壁を前に、動けなくなってしまうことが多いのではないでしょうか。
本当は、社会人ドクターを意識するような方にとっては、
・博士取得が仕事に役立つ可能性が高い環境にいる
・博士への憧れが強く、取得による自己肯定感の向上が期待できる
・行動力があり、博士を活かして転職をできるようなマインド
であることが多いはずです。
なので、魅力(メリット)が大きいことを知り、かつ、壁がどのようなもので、どのように乗り越えるべきか知ることがとても大切になります。
次の章で、私の社会人ドクターの全容と振り返り
その次の章で、私の社会人ドクターの教訓から最も大事だと思うことの解説
をしておりますので、ぜひ魅力の明確化・壁の明確化と対策をするための助けとして活用してください!
②私の社会人ドクターの全容と振り返り
それではここから私の社会人ドクターの全容と振り返りを紹介します。
内容は、
・社会人ドクターを始めるまでの経緯
・入学から卒業までの在学時
・卒業後のキャリア転換
の3つの時期に分けて、それぞれ、
・一般的な情報
・自身の経験
・振り返り
について書いていきたいと思います。
社会人ドクターを始めるまでの経緯
一般的な情報
社会人ドクターを始めるまでの流れは一般的に、
①社会人ドクターをやりたいという気持ちが高まる
②ネット検索等で自身のやりたいことと合致する大学・研究室の目星をつける
③会社(上司)から大学に行くことの了承を得る
④志望する研究室の先生に直接会いにいき、説明を受け、決める際は挨拶をする
⑤出願・入試
といった感じかと思います。
既婚者で家族持ちの方は、どこかでパートナーの方からの了承を得ることも必要になりますね。
プライベートの時間の多くを研究活動等に充てることになるため、家族の交流や育児負担等がこれまで通りとは行かなくなる可能性が高いですし、
学費等の負担によって家計への影響も少なからずありますので。。
多くの方にとって、上記の
③会社からの了承を得る
ことに大きな壁を感じている方が多いかと思います。
社会人ドクターをやっていくためには、
・在学期間中はできるだけ残業を減らして研究活動に時間を充てる
・在学期間中に大学に通えなくなるような遠方地への転勤がない
ことが必要になりますが、「どうせ会社は考慮して了承してくれないから無理だろう」と感じている方がほとんどです。
これらのことに対し、私がどのような経緯で社会人ドクターを始めようと考え、実際に始めるに至ったのかご説明します。
私の経験
私は修士卒で就職していたのですが、学生の時に、修士卒で就職するか、博士課程に進むかかなり悩んでいました。
というのも、研究が楽しくて好きでしたし、「博士」というのに対する憧れもありましたし、
「博士に行かずに修士でやめる」というのが、なんだか、本当は続きがある課程なのに途中でやめて中途半端な気持ちもありました。
結局、「まずは早めに社会の中に入って色々みる」ことを優先し、
「博士はその社会経験を踏まえた上で、やりたいと思ったことをやりたい時にすればいい」という結論に至り、修士卒で就職することにしました。
なので、就職後も「いつか博士を取るぞ」という気持ちと、「やっぱり博士とっておきたかったな」という博士への憧れ(というより未練)がずっとありました。
しかし、就職した会社では研究職ではなかったですし、全国転勤ありで3年間同じ大学に通える保証が全くないようなところだったので、社会人ドクターをやることに大きな壁を感じていました。
そして、社会人ドクターをするには、会社の制度である「国内留学制度」を利用して、会社業務として博士課程もするという方法しかないと考えていました。
「国内留学制度」には上長の許可や社内の審査が必要なのですが、自身は研究職ではなく理解を得にくいうえに、部門の雰囲気として博士を必要としておらず、むしろそれをやることにより業務経験が減ることのマイナスを大きく危惧しており、
大学に行けるイメージがほとんど持てずにいた時期もありました。
あるとき、リクルート活動で出身研究室を訪れて、先生と仕事や研究への興味等を色々話をしていたところ、
「博士課程をやりにうちに来ないか?」
と誘っていただきました。
そのとき、それまで「うちの会社で社会人ドクターをやるのは無理だな。。」と諦めかけていたのですが、
実際に誘われてみて、「やりたい!とりあえず無理かもしれないけど偉い人に直談判してやる!」と思い、
次の日に部署長の方に直談判をして、
・社会人ドクターをやりたいという気持ち
・博士をとって会社にこんな感じに貢献できるというアピール
・大学との繋がりを持ってこんなメリットが見込めるはずだというアピール
を伝えたところ、思いの外前向きに考えてもらえ、検討してもらった結果、
「会社の制度を使って行くのは時間もかかるし難しいけど、自費でも行くと言うのであれば、行ってもいいぞ」
と言ってもらえました。
それまでは、社会人ドクターをやるには「国内留学制度」のような会社の公式の制度を利用しなければいけないと思っていましたが、
自費で自分で行けるものなのだというのが目からウロコでした笑
また、行ってもいいと言ってもらえた理由として、
「自分から『行きたい』と言ってくる熱意が良かった」
と言っており、あのとき勇気を持って直談判をしに行って良かったです。
会社からの承諾を得てからは、
・先生への挨拶+研究テーマの調整
・出願書類の準備
・入試
等を進めました。
会社からの承諾から出願まではあまり期間はありませんでしたが、
いつでも大学に入れるように、TOEICの本試験を事前に受けて、入試に必要なスコアをとっていたため、問題なく出願・入試まで進めることができました。
(それまでは会社で定期的に受けるTOEICーIPテストしか受けていなかったため、入試で使える公式なスコアはありませんでした。。危ない。)
そして、次の春から無事に入学し社会人ドクターとして学び始めることとなりました。
振り返り
ここまでを振り返り、社会人ドクターを始めるまでの流れとして良かった点と、もっとこうすれば良かったという改善点をまとめてみます。
良かった点は
・社会人ドクターをやりたいことを会社に直談判してやる気を見せて受け入れられたこと
・いつでも大学に行けるように、取得に時間のかかるTOEIC本試験を事前に受けていたこと
があげられます。
やはり、社会人ドクターをすることは、よっぽどのことがない限り会社側から勧めてくれるようなことはありません。
むしろ、仕事の妨げになりそうで、やらないでくれる方がいいという方が多いのかもしれません。
なので、自分からやる気を見せて訴える(+それで会社に貢献するというアピールもする)ことで、
「こいつに行かせてみるか」
と思ってもらえるようになるのかなと思います。
また、上記したようにTOEIC本試験は年間の試験開催回数が限られており、また、申し込み→受験→スコアシートが出るまで時間もかかるため、
事前に受けてスコアを取得していたことも良かったことと言えます。
会社等で定期的に受けるTOEIC-IPテストのスコアは公式な入試では使えない場合が多いため、事前に準備しておかないと、
会社からは許諾を得たのに、TOEICスコアがないから大学に出願できないといった悲しいことになりまねませんので。。
逆に、こうすれば良かったという改善点は、
・「国内留学制度」だけでなく、自費で大学に行くという選択肢を知っておくべきだった
・出身研究室だけでなく、他の大学,研究室に行くことも広く考えるべきだった
・博士取得後のキャリアをもっと良く考えておくべきだった
があげられます。
社会人ドクターの始め方として「国内留学制度」のような会社の公式制度の利用しかないと考えていたため、
研究職でない自分がいかに会社の制度に乗っかれるか,そのためには出身研究室で先生からの推薦も使える,等々、、
本来の研究分野への興味や、深めたい専門性以外の、少し政治的なことを考えてしまっており、
社会人ドクターのやり方としてかなり視野の狭い状態となってしまっていました。
会社の公式制度は関係なく、自費で、自分のプライベートの時間を使って社会人ドクターを始めることができるのであれば、
入る大学や研究室,そこで得られる専門性などについてもっと広い視点で考えることができたかなと反省しています。
また、広い視点で考える課程で、博士取得後のキャリアについてももっとしっかり考え、
どのようにキャリアに活かせるか、ある程度明確にして挑めていればとも思っています。
(そのあたりがあやふやだったので、在学中に色々悩んでしまったり、博士取得後に所属する会社では活かせなそうだと感じて失意の中転職を決めることもなかったのかと思ったり。。。)
以上が、博士課程入学前までの経緯と振り返りとなります。
やはり、社会人ドクター経験のある方が周りに豊富にいるということは稀で、その始め方等の情報がかなり限られていることが、
始めるための大きな壁を作り出しているのだと感じます。
なので、ぜひここまでのことを参考に、社会人ドクターの始め方について検討してみてください!
また、社会人ドクターを始めるまでの情報はこちらのページにまとめていますので、ぜひご覧ください。
博士課程での研究活動
一般的な情報
社会人ドクターの研究活動で重要となるのは、
・卒業要件のクリア
・研究にかける時間の捻出
・学費等のお金の捻出
になるかと思います。
卒業要件は、一般的に
・必要な単位の取得(ある程度講義を受けて単位を取得する必要があります)
・論文の投稿
・学会(特に国際学会)での研究発表
・博士論文の執筆および審査
・TOEICスコア
が求められることが多いです。
ここからわかるように、皆さんのイメージする博士としての研究活動だけでなく、
講義を受けて単位を取ったり、TOEICのスコアを取るという研究以外のことも必要になります。
講義はひと昔前では、修士と博士は同じ講義を取り、その単位を流用することもできたのですが、
最近では、博士課程の講義という分類ができていることが多く、博士課程でもそれなりの数の講義を受ける必要があるので注意が必要です。
また、社会人ドクター特有の注目店として、時間とお金の捻出があります。
働きながら、人によっては配偶者や子供等の家族持ちの方が、仕事とプライベートと大学を両立するための時間の使い方がとても大変となります。
・残業を減らす
・育児,家事を配偶者に多く頼る
等が必要になってきます。
また、収入のある社会人は、奨学金やTA・RAのような学費の補助を受けることができないことがほとんどです。
そのため、学費は満額自費で払うこととなり、トータルで200万円以上かかることを覚悟しなければなりません。
時間・お金両面とも大変ではありますが、なんとか研究と両立する工夫が必要になりますね。
私の経験
私の社会人ドクター時代は、
・会社の上司は大学に通っていることに理解があり、フレックスや休暇取得等柔軟に対応可能
・残業はあまりなく、仕事も自分でスケジュール管理可能
・既婚共働き。在学中に子供ができるが妻の育休期間中に卒業
という環境でした。
なので、仕事・プライベート双方で比較的研究活動の時間確保のための調整がしやすい環境でした。
(残業が多かったり、妻が仕事復帰して子供ももう少し大きかったらかなりきつかったですね。。)
博士課程の私の流れは、
1年目は、
・できるだけ必要な講義(単位)は取ってしまう
・まずは研究の方針(とっかかり)を決めてしっかりスタートする
・年度末の学会にはオリジナルのネタで発表できるようにする
として、
2年目は、
・論文投稿できる研究成果を出す
・学会発表をかさねる
として、
3年目は、
・論文を投稿,査読をクリア
・学会発表をかさねる
・審査の準備や博士論文の執筆
と言った感じでした。
よく言われることですが、
・学部4年は、テーマと研究の切り口と道筋を教えて研究をする
・修士は、テーマと研究の切り口を教えて研究をする
・博士は、テーマだけ与えて自分で研究する
と言った感じで、博士課程の研究では、お題だけあって、それをどんな切り口で進めていくかは自身で考えていく必要があり、この最初の過程がかなり大変となります。
なので、私も博士課程1年目では、その切り口や研究の全体像をしっかり定めた上で、研究を始めて、
年度末の学会でなんとかオリジナルネタの発表ができるまで進めることができました。
実験自体は、基本的に研究スタッフがいる土日を選んで実施することができました。
(土日も研究室に来て取り組んでいるスタッフの方に感服と感謝です)
2年目は外部の大型研究機関との共同試験等により、論文投稿できそうなインパクトのある研究成果も出すことができ、順調に進んでいきました。
3年目は、想定していた試験がトラブル続きで結果が出ず、卒業を半年延長することとなりましたが、、
実際、博士論文の執筆の大変さを舐めていたこともあり、半年延長したとしてもかなりギリギリの執筆となっていました。
また、社会人ドクターですと、なかなか学内に交友関係がなく、審査等のイベントでどんなことがあるか等、
現役学生であれば、先輩や同期から共有されているような内容やコツのような情報が私にはほとんどなく、その点でかなり苦労しました。
(実際、最後の審査の過程で色々ヘマもやらかしました。。)
卒業までかなり苦労しましたが、私にとって以下のことがなんとか3年半で卒業できるプラス要因になったのかなと思います。
・休日でも実験ができるように研究スタッフが協力してくれた
・会社上司からの理解があった(外部研究機関に行くために1週間まるまる有給休暇取る等もした)
・会社業務で実施した試験も一部研究成果に入れることができた
その他、家族や関係者にもかなりの協力を得ての卒業です。この場を借りて改めて感謝ですね。
振り返り
ここまでを振り返り、社会人ドクター在学中の流れとして良かった点と、もっとこうすれば良かったという改善点をまとめてみます。
良かった点は
・会社の上司の理解があったこと
・研究スタッフが休日実験等に柔軟に対応してくれたこと
・会社業務の研究を一部利用できたこと
また、上記していませんが、
・講義はリモート講義が導入され比較的楽に受けられたこと
があげられます。
やはり、会社側と大学側両方から強い理解があり、柔軟な対応が可能であることは、
時間の制約が厳しい社会人ドクターにとってとてもありがたかったです。
また、近年は講義をリモートで出席することが可能(講義だけでなくゼミ等も)となっていますので、平日の日中にしか講義がない場合でも、
在宅勤務+ちょっと中抜け
程度で出席できるようになりました。
(リモートができない時は一つの講義のために半休を取る必要がありました。。)
会社業務の研究を一部利用できたことについても、
・大学のためだけの研究をするには時間が足りない
・企業だからこそできる実用化研究を取り込んでオリジナリティを出せる
という点でとてもプラスとなりました。
もちろん、会社での成果はなかなか博士論文として公開できないものも多く、自分の思う形で成果に取り込むことが難しい点もあるのですが、
これを使えたことは私にとって大きかったです。
反対に、こうすれば良かったという改善点は、
・学内でもっと、相談できる仲間を作っておくべきだった
に尽きます。
博士課程には、
・中間審査
・公聴会,最終審査
等の審査関係のイベントだけでなく、
・卒業関連の事務手続き関係
・必要な倫理教育等
・特殊な講義,単位等
等、先輩後輩・専攻の同期等で教え合うことでスムーズにやり抜け、
逆に、そういう情報網を持ってない人にとっては一人で全部調べるにはかなり骨がおれることが多くあります。
時間が足りないし、”同期”がいない社会人ドクターにとって、そういう情報を共有したり、
大学生活について相談したりできるような仲間は自分から積極的に動いて作るしかありません。
私はどちらかというと、歳の違う新しい友達を作るのが苦手で、しかも、勝手知ったる出身専攻・出身研究室に戻ってきたというおごりから、そのような情報網の必要性をあまり重要視していませんでした。
しかし、案の定情報がないことで相当苦労し、
・倫理教育や特殊な講義,単位はかなりギリギリで実施
・最後の一連の審査でごたつく
・種々のフォーマットを手にいれることに苦労する
という感じで、仲間がいれば避けられた苦労をかなりしたように思います。
また、精神的にも孤独感が強く、その意味でも仲間が欲しかったです。。
皆さんもぜひ、身近な社会人ドクター経験者や、同じ専攻内(違う研究室)に社会人ドクターがいれば、積極的に交流して、仲間を作ってください!
また、博士課程在学中の情報はこちらのページにまとめていますので、ぜひご覧ください。
卒業後のキャリアップ
一般的な情報
社会人が博士取得後のキャリアアップとして想定できるのは、
・社内で専門性を活かして昇進or望む職種に異動
・博士取得を活かした転職
があるかと思います。
社内でキャリアアップを目指す前提として、その会社もしくは部署にて”博士”や学問的な専門性に対する評価が高いことが必要となります。
しかし、研究職など、限られた職種では評価されることがありますが、多くの場合あまり評価されていないが実情です。
そもそも、現在の職に修士卒で配属されている時点で、会社としては「この部署の業務は博士まで取る必要はなく、修士+業務経験が最適」と考えているはずです。
そのような職では博士取得が評価されることは少ないといえます。
博士を活かした転職では、
・近年の転職市場の活発化
・即戦力となる専門性を持つ人材の需要
・新規事業開発の活発化により開発能力のある博士の需要
から、転職による博士のキャリアアップの環境は良いのが近年の実情です。
また、自分自身にとっても、そういう職は博士を活かした業務ができるところ、博士取得分を考慮して給料を加算してくれることが期待できることから、
とても良いキャリアアップの選択肢になるかと思います。
私の経験
私はなんとか博士課程を修了し、晴れて博士号保持者となったのですが、
卒業するまでは、正直なところあまり具体的なキャリアアップについて考えてきてはいませんでした。
もちろん、自分のキャリアに”博士”というものを加えて、
大学の研究→企業での研究開発→事業としてのプラント設計
を一気通貫で経験のある新規事業開発人材になりたいな~というイメージはしていたのですが、、
実際にそのキャリア・職を獲得するための具体的な手段(社内での異動の可能性・転職等)については考えていませんでした。
というより、なんとなく「今いる会社の中で博士取得を評価してくれて、その方向のキャリアに進ませてくれるかな」と甘い期待を抱いていたというのが本当のところでした。。
また、そもそも社会人ドクターを始める時は、
「博士号が欲しい!」
という博士への憧れや単純に自己研鑽の気持ちで始めたというのが強く、キャリアのことを少し意識したのは、
「社会人ドクターって思った以上に大変。。この苦労は何かしらの形で活かさなきゃ。。」
という感じでしたし。。
そして博士号を取得し、会社の関係者に対してお礼の意味も込めて報告をしたり、いろんなアピールをしてみたのですが、、
・博士取得に対して無反応な部署幹部(お礼メールに返事もくれません。。)
・「博士取れたのは俺のおかげだ」という雰囲気満々のおじさん
・社会人ドクターって片手間でチョロっとやれば取れる、中身のない資格みたいなやつだよねという嫌味を言う若手
ばかりで、とても評価してくれる雰囲気ではありませんでした。。
また、卒業と同じくらいの時期に、
・これまでやっていた業務(複数)が一気に区切りを迎えた(プロジェクトの終了等)
・前回異動してから3年以上経過しており、そろそろ自分の異動の時期になったが、その行き先は全く見当がつかない状況(しかも全国転勤ありの会社)
となり、どの場所のどんな業務に異動するかわからず、博士を活かせるようなキャリアになるかも全く見通せない状況でした。。
この時、
「こんな会社の意向に依存した受け身のキャリアよりも、自分自身に主導権のあるキャリアを歩みたい!」
と思い、その手段として、
「そうだ!転職しよう!」
となりました。
そこからは、異動になる前に転職できるよう短期集中で一気に転職活動を開始し、
・転職の方法に関する情報収集
・自身のキャリアの棚卸し
・自身の人生の優先事項やキャリアを活かしてどんなことがしたいかを考慮した希望の職の選定
・希望する職に適した転職方法の検討
をし、
主に、
・転職エージェント
・スカウト型転職サイト
・その他自身で気になる企業を調査,応募
を活用して転職活動を進めていきました。
そして、
・やりたかった新規事業の研究開発業務
・これまでの自身のキャリアや博士取得を評価してくれる
・希望するエリアの会社、かつ、転勤(転居を伴う異動)なし
・給料もかなりアップ
な職に受かり、転職をすることができました!!
これにより、これまでのキャリアや社会人ドクターの苦労を活かしてやりがいのある仕事をすることができ、とてもより結果となりました。
社会人ドクターはかなり苦労があり辛いこともありましたが、結果として転職によって自分自身がやりたかったこと、かつ、それを評価し良い待遇の職を得ることができ、
結果として
「本当に社会人ドクターをやってよかったな~」
と思うことができました。
転職後に、やりたい仕事かつ博士の肩書きのついた自分自身の名刺を見た時、感動で震えました!
振り返り
ここまでを振り返り、博士取得によるキャリアアップの流れとして良かった点と、もっとこうすれば良かったという改善点をまとめてみます。
良かった点は
・結果として、転職によってやりたい仕事と良い待遇の職を得ることができた
に尽きます。
就職前からもともと博士への興味があり、それはつまり、自分自身は博士であることを活かした職に就くことに興味があったということであったと思います。
修士で卒業して就職することを選んだのですが、やはり、博士をとったうえでそれを活かした仕事をすることへの未練がありました。
また、就職してさまざまな仕事を経験しましたが、その中でもやはり開発・新規事業系に最もやりがいを感じていました。
しかし、当時いた会社ではそんな業務に異動できる保証はなく、また、博士取得によって給料が上がると言うこともありませんでした。
そのため、思い切って転職をすることで望む職を手に入れることができ、とても良かったと思います。
ただ、上記の通り、”結果として”であって、そのキャリアアップの経緯は計画的なものであったとは言えず、反省点は多いです。
次に、こうすれば良かったという改善点は、
・キャリアアップの方法について事前によく調べておくべきだった
・キャリアアップの方法として早い段階で転職も選択肢に入れるべきだった
です。
キャリアアップのための要素としての博士取得やキャリアの棚卸しはしていたのですが、
キャリアアップの具体的な方法については、博士課程が終わるまであまり考えておらず、
結果として、
・今の会社では主導権を持ってキャリアを築けない
・急遽転職を決意して実施
することとなりました。
結果としては良い転職をすることができましたが、あくまで”結果として”であり、
計画性に欠け、”運が良かった”という要素も多分にあるのかなと反省しています。
もちろん社会人ドクター挑戦には「勢い」が大事ですが、
やはり3年間の自身の時間と、200万円以上のお金を要する大きな自己投資ですので、
それを最大限上手く活かせるように、博士取得後のキャリアアップについて早い段階でしっかり考えてみてください!!
また、社会人ドクターを終えてからのキャリアアップに関する情報はこちらのページにまとめていますので、ぜひご覧ください。
③社会人ドクター挑戦でこれがすごく大事!
最後に、私の思う「社会人ドクター挑戦でこれがすごく大事」なことを二つ挙げさせていただきます!
それは、
・情報
・仲間
です!
私のこれまでの振り返りを見てみると、
出身大学かつ出身研究室で博士を取ったから事前に情報があって良かったことや、
良かったことだけど、あくまで”結果的に”良かっただけで、事前にわかっていたことではなかったことや、
事前に知らなかったから上手くやれなかった/非効率だった
ことがほとんどでした。
これは、事前に網羅的な情報があったり、仲間がいてTips的な細かい情報の共有や種々サポートし合うことができれば避けられたことばかりです。
また、仲間というのは、情報の共有だけでなく、同年代の同期が研究室にいないような孤独な社会人ドクターにとって、とても大事な心の支えとなります。
同じ専攻,同じ大学もしくは、同じ時期に他大学でもいいの社会人ドクターをやっていたり、
もしくは、すでに社会人ドクターの経験のある先人でもいいです。
社会人ドクターの大変さや、博士課程をどのように過ごすか、仕事や家庭等との両立など、さまざまな面で気持ちを共有できて話し合える仲間をぜひ作ってください!
ちなみにですが、
上記のような気持ちから、このサイト「学び直し大学 ~社会人ドクター挑戦のための情報~」では、
大事なことの一つ目である「社会人ドクターに関する網羅的な情報」を提供しつつ、
皆様のコメント投稿等でコミュニケーションを取れる「仲間がいることを感じられる場」も作れればと思い、当サイトを作っています。
ぜひ社会人ドクター挑戦に活用してください!!