社会人ドクターへの挑戦を検討している方にとって、
「どんな研究室を選べばいいのか?」
と悩んでいる方も多いかと思います。
ここでは、社会人ドクターを経験し、それを活かして転職・キャリアアップに成功した筆者が考える研究室選びのポイントを、
・基本的な研究室選びのポイント
・社会人ドクターだからこそ気にすべき追加の重要ポイント
を紹介します!!
①基本的な研究室選びの手順3ステップ
研究テーマの適合性を確認する
研究室を選ぶ際に最も重要なのは、研究テーマの適合性です。
自分の専門知識や興味がある分野に関連する研究室を選ぶことは、モチベーションの維持や社会人としての今後の展望にも大きな影響を与えます。
また、社会人としてのキャリアと親和性のあるテーマを選ぶことも重要となりますので、自身が興味のあるテーマに近い研究室をまずピックアップして検討してみましょう!
研究室の評判を調査する
3年(もしくはそれ以上)の期間を過ごす博士課程の研究室では、”環境”がとても重要となります。
・人間関係
・研究のやりやすさ
・研究に対する姿勢,雰囲気
が、博士課程での負担や研究成果に大きな影響が出てきます!
(雰囲気最悪の研究室,指導教官がひどい,最近は全然研究成果がでていない等色々あるのが実情です)
そのため研究室の評判や内情を事前に調べて、進学・所属する研究室の候補を絞ることはとても重要です。
これらを調べる方法としては、主に以下の3つがあります。
その研究室の出身者や関わったことのある人から話を聞く
同じ研究室で研究を行った方や、共同研究などで研究室と関わったことのある方から情報をを収集し、研究室の雰囲気や指導教授のサポートについての情報を入手することができます。
また、同じ研究室でなくても、同じ大学の同じ専攻出身で、その研究室に所属する友達から色々話を聞いていた人がいる場合もいろんな情報を教えてくれることが多いです。
・あの研究室はお金がある
・あの研究室は面倒見がいい/悪い
等の情報は学生内でも結構共有されていることが多いです。
研究資金の獲得状況等を見る
言わずもがなですが、研究を行うには多くの資金やリソースが必要です。
研究室がどれだけ資金を調達できているかというのは、研究活動の際にどれだけ多くのリソースを使えるか(高額な分析装置を持っている/外注分析等をたくさんできる)に影響します。
また、研究費をたくさん獲得しているということは、その研究室で実施している研究に対する注目度が高いことが多く、”これから伸びる分野/テーマ”であるかどうかの判断指標の一つにもすることができます。
研究費の獲得状況に関する情報は、研究室の公式ホームページや、研究室所属の先生や研究員の名前でネット検索をすることで簡単に知ることができます。
とりあえずネット検索をしてみる
インターネット検索でも多くのことを知ることができます。
研究室の公式ホームページでは、
・研究分野
・研究室の雰囲気(写真等)
・研究室が保有する機器等
・研究費獲得状況や学生の表彰記録等
が記載されていることが多く、どのような研究室かざっくり知ることができます。
また、先生や研究員の方がこれまでどのような活動に関わってきたかを知ることもできます。
(学会活動やテレビインタビュー等)
実際に研究室訪問をする
最終的に候補となった研究室については、必ず実際に研究室訪問をして自身の目で見てみましょう。
・先生の人柄
・社会人ドクター受け入れに対するスタンス(社会人と博士課程の両立に否定的な先生もいますので。。)
・研究室,スタッフや学生の雰囲気
・現在の研究室でホットな研究テーマや今後の展望
など、実際に見たり話を聞いてみないとわからないことを多く知ることができます。
研究室に興味があり、進学を検討しているということを研究室の問い合わせ先に連絡することで
比較的簡単に研究室訪問をすることもできますので、是非してみてください!
②社会人ドクターだからこそ気にすべきポイント5選
ここまでは”一般的な”研究室を選ぶ際のポイントを解説しましたが、
ここからは、”社会人ドクターだからこそ”気にすべき追加ポイントを解説します!
1. 自身の将来キャリアにプラスになる研究分野か
社会人にとって、「現在修士卒で就職して働けているのに、あえて博士を取る」理由は
多くの人がキャリアアップを目的の一つとして考えているのではないかと思います。
そのため、その博士課程で身につける専門性が、自身の将来キャリアにプラスとなり、
結果としてキャリアアップができるものであることが重要となります。
その考え方としては、
・自身の業務分野においてさらに専門性を深めることのできる分野である
・自身の業務分野との相乗効果によりキャリアの発展が見込める異分野
・シンプルに今話題性が高い分野やテーマ
などがあるかと思います。
もちろん、「博士」そのものに対しても、高い論理的思考力を持つことの証明等多くのプラス要素がありますが、
やはり専門性がキャリアとうまく結びついて今後の発展につながることが望ましいですね。
2. 自宅でも進めやすい研究内容にできるか
社会人は基本的に平日の日中は会社業務があるため、その時間に大学に行って研究を進めるというのは有給休暇を取得する等、なかなかやりにくいです。
そのため、自宅でも進めやすい研究内容にすることが、社会人ドクターにとって重要となります。
特に化学系などの実験が必要な研究ですと、実際に研究室に行って実験をしなくてはいけません。
さらに最近では、安全性の観点から、教官や研究員等、管理ができる職員が出勤している状態でないと実験をしてはいけないとしている大学・専攻も多く、
職員がいない夜間や休日には実験ができなくなってしまっていることもあります。
社会人ドクターにとって、会社の後の夜間や、休日をメインに研究活動に充てることとなるため、このような状況はかなりきついです。。
そのため、研究の多くの部分を自宅等で実施可能な、シミュレーション等を取り入れた研究テーマにできるかどうかというのが重要なポイントとなります。
3. ゼミ,指導教官との相談がリモートでしやすい環境か
上記の2.と同様に、平日の日中に大学に行くためには休暇やフレックス等の調整が必要な社会人にとっては、大学に行く回数を極力減らせるよう、ゼミや指導教官との研究の相談をリモートでできることが重要となります。
ゼミは毎週日中にあることが多く、それに毎回参加できるよう調整することはかなり大変となります。
また、指導教官との相談については、指導教官自身が多忙であることが多く、
自分と指導教官の都合の合う時間で相談の調整をすることはかなり困難です。
ゼミや研究相談をリモートで実施することについては、個々の先生の考え方次第ということもあり、
実際はリモートで実施することに否定的な先生もいるかと思います。
社会人ドクターの事情に合わせてリモート等で臨機応変に対応してくれるかどうかという点も重要なポイントとなります。
4. 講義がオンラインで受講可能か
これも上記2,3.と同様に、平日の日中に大学に行く回数を減らせるよう、
卒業に必要な単位取得のための講義がリモートで実施可能な大学・専攻であることが重要なポイントとなります。
これについては、実際に研究室の学生さん等に研究室訪問時に聞いてみると良いかと思います。
5. 学会等の出張費を研究室で出してくれるか
最後にお金関係のポイントとして、
国内/国際学会や、外部研究機関での試験等のための出張費を研究室で出してくれるかということを挙げます。
会社で働き収入のある社会人ドクターは、
・TAやRAのような大学から給与をもらえる制度を使うことができない
・学振のような国からの補助金を受け取ることができない
・条件の良い奨学金を受け取ることができない
・等々
博士課程の学生に対する経済面の補助制度のほとんどを使うことができません。
その理由は、
補助制度利用の条件に、一定以下の収入であることが求められていたり、
会社側の制度として、「他の組織に雇用され給与を受け取ることは禁止する」というようなものが存在したり
することが主なものです。
そのため、社会人ドクターにとってお金事情は結構厳しいです。
ここにさらに出張費まで全て自腹となるとかなり家計にダメージがきます。
(卒業要件として国際学会への参加を求めている専攻も多く、海外の学会に自腹で行くこととなると数十万円が一気に吹っ飛びます)
なので、研究費が潤沢にあり、学生の出張費をしっかり出してくれるかどうかということがとても重要なポイントとなります。
③まとめ
ここでは「どんな研究室を選べばいいのか?」と悩んでいる方へ、
社会人ドクターを経験し、それを活かして転職・キャリアアップに成功した筆者が考える研究室選びのポイントを解説しました!
・基本的な研究室選びのポイント
・社会人ドクターだからこそ気にすべき追加の重要ポイント
の合わせて8点をぜひ参考にして、良い研究室の選択をしてください!!