社会人ドクターを始めるにはどのような流れになるのか?
早めに取り組んでおいた方が良いことはなんなのか?
疑問に思っている方が多いかと思います。
ここでは、社会人ドクターを始めるまでの実際にやらなきゃいけないことと、
必須ではないですが、社会人ドクターだからこそ事前にやっておいた方がいいポイントを紹介します!
私の社会人ドクターの経験や、周りの社会人ドクターを見てわかったことを踏まえて紹介しますので、ぜひ参考にしてください!
①社会人ドクターを始めるまでの流れ・やらなきゃいけないこと
まずは、社会人ドクターを始めるまでの実際の流れ・やらなくてはいけないことを順番に説明します。
基本的には、社会人ドクターを始めるまでに重要な4つのポイントがあります。
それは、
- 研究室を選ぶ
- 会社の上司からの同意を得る
- 出願前に希望の研究室の先生への挨拶・大まかな研究方針のすり合わせ
- 出願・入試
となります。
ここでは、これら4つのポイントについて詳しく説明します。
やらなきゃいけないこと1:研究室選び
まずやることであり、最も重要と言えるのが研究室選びです!
これから得る自身の専門性がどのようなものになるか大きな影響を与えますし、
3年(もしくはそれ以上)の期間を過ごす博士課程の研究室の雰囲気というのは研究活動の大変さやメンタル面への影響も大きいです。
研究室を選ぶ際に気になることとして、まずは、その研究室の研究内容とそのアクティビティの高さかと思います。
研究内容が自身の興味や業務上の有効性と合致していることはとても重要で、
博士課程での研究活動を続けるモチベーションを保つことであったり、
博士取得後のキャリアアップに繋げられるか
ということに大きく関わります。
さらに、指導教官となる先生の人柄や、研究室の雰囲気等も気にすべき点となりますので、
これについてはぜひ研究室訪問をして自身の目で確認して選んでください。
また、社会人ドクターならではの研究室(だけでなく、大学・専攻)選びのポイントもあります。
それは、研究や講義等をリモート(自宅)で進めやすいかという点です。
会社業務と学業を両立する社会人ドクターにとって、大学の講義,ゼミ,研究を平日の日中に行うために毎回有給休暇等を取得することはかなり厳しいです。
一昔前と違い、最近は博士課程の学生もそれなりの数の講義を受けなくてはいけないため、これをリモートで受講可能であればかなり負担を減らすことができます。
また、研究についても、大学に行かないとできないものだけでなく、できるだけ多くのことを自宅でも進められるようなテーマにすることで、負担を減らしつつ研究をしっかり進められるようにすることも気にしておくべきポイントであると言えます。
研究室選びについてはこちらの記事にさらに詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてください!
やらなきゃいけないこと2:会社の”上司”からの同意を得る
進学したい大学・研究室が決まり、大学の先生ともある程度話をしたら、
次に、会社の上司からしっかり同意を得ることが必要となります。
制度上は、自身のプライベートの時間を使って大学に入って社会人ドクターになることに対して会社からの許可は必要ではありません。
(「勝手に大学に通ってはいけない」というような規則は会社には無いはずです)
しかし、社会人ドクターをやる上で、
・平日に講義に出席/実験をするためにフレックスや有給休暇を取得する
・学会参加や外部機関での実験のために終日(2日以上続けて)休暇を取得する
など、業務を柔軟に調整して仕事と学業を両立する必要があります。
そのためには、その状況について上司に同意・理解してもらうことで、柔軟に調整できるようにする必要があります。
また、大学によりますが、社会人ドクターは出願の際に会社の上長の同意書を求めてくる場合があります。
実際に私は同意書の提出を求められ、部門長クラスの方にサインをもらったという経緯があります。
大学側としては、学生がちゃんと会社から同意を得ることで、業務都合で途中退学することになったり、大学に通うことで学生が何か会社で不当な扱いを受ける可能性を下げる意図があるのかと思いますが、、、
個人的にはこの制度は、出願のハードルになるのでやめてほしいですね。。
やらなきゃいけないこと3:出願する研究室の先生への挨拶・大まかな研究方針のすり合わせ
次に出願直前の準備としてやらなきゃいけないこととなります。
まず、出願・希望する研究室の先生に、正式に出願することについて挨拶をしておく必要があります。
先生にとって、自身のもとで博士を取るということはかなり強い師弟関係になるということになりますので、
礼儀的/儀式的なものとなりますが、出願前にしっかり挨拶をしておきましょう。
また、博士課程の入学試験では、博士課程で実施予定の研究テーマと研究計画を説明することが求められるため、
希望する研究室の先生と、
・研究テーマ
・どのような方針で研究を進めて成果を出すか
・博士課程の期限内にしっかり修了するためのスケジュール感
をすり合わせておく必要があります。
そのため、入試準備の観点からも、出願直前に先生としっかり話をする機会を設けましょう。
やらなきゃいけないこと4:出願・入試
最後はいよいよ出願・入試です。
出願書類は大学に行って入試関連窓口等でもらうか、大学によっては郵送で取り寄せることもできます。
出願書類の提出期間は短い場合が多いので、ちゃんと期間内に提出できるよう書類の準備をしましょう。
場合によっては、会社の上長からのサインを求めるような書類が必要となる場合もありますので、
これについては早めにその必要の有無を確認した上で、事前に会社内で調整しておくことをお勧めします。
②社会人ドクターを始めるまでに”早めに”やるべきこと
次に、社会人ドクターを始めるまでに、「必須では無いけど、やっておくべきこと」を3つ紹介します!
これは必要ではないですが、社会人ドクターを円滑に始めること・充実したものにすること・大きなリターンを得るために大切なこととなりますので、
ぜひ参考にして実施してほしいことです!
やるべきこと1:キャリアの検討
社会人ドクターでは、
・取得するまでに3年間という長い期間を要する(その間プライベートの時間の多くを費やす)
・学費だけでも200万円くらいかかる
・そもそも博士課程がかなり大変
であるため、かなり大きな労力とお金を使う自己投資であると言えます。
そのため、
博士取得後にどんなキャリアを進みたいか・なぜ博士を取りたいのか
ということをしっかり考え、整理することで、
・自身にとって社会人ドクターを取る意味があるのか
・社会人ドクター在学中に、「なんでこんな辛いことやってるんだろう・・」という迷いが生じないように
をはっきりさせておくと良いです。
例えば、
・博士取得を自社内の昇進等のキャリアにどう活かすか
・博士号保持者というピースを自身のこれまでのキャリアに組み合わせて良い転職をする
等ですね。
また、自身にとって博士号取得というのがどれだけ人材としての市場価値の向上があるか事前に確認しておくこともお勧めです。
方法としては、事前に一度転職活動(転職をするのではなく、転職活動)をしてみることで、現在の自身の市場価値を知り、かつ、博士号を取得したらどのような仕事が視野に入ってくるかを知ることができます。
また、博士を取る専門分野の選定をする際にも、現在の人材市場でどのような分野の専門人材が必要とされているか(市場価値が高いか)ということも知ることができます。
これはなかなかハードルの高い作業のように感じるかと思いますが、社会人ドクターに費やすコスト(労力・時間・お金)の大きさを考えると、そのコストパフォーマンスを事前にある程度わかっておくことはとても大事なことかと思います。
やるべきこと2:入試の準備
博士課程の入試では、多くの場合、
・面接(過去の研究実績+博士課程での研究計画のプレゼン)
・外部英語試験(TOEIC等)
が用いられます。
これのうち、TOEIC等の外部英語試験は出願までに試験を受けた上でスコアシートを出願書類の一つとして提出するのが一般的です。
このため、より良いスコアを出願までにとっておく必要があるということです。
しかも、基本的に
・会社で定期的に実施しているTOEIC-IPではなく、試験会場で実施する公式テストでないとだめ
・2年以内に取得したスコアでないとダメ(過去に一回いい点をとったことがあるというのはダメ)
であるため、2年以内に取得した良いスコアがある方以外は、この博士課程入試に向けてTOEICを受け直す必要があります。
英語が得意でない方は勉強に時間がかかる上に、何度か受験して良いスコアを取ることになる可能性があるため、
これについてもぜひ早めに取り組むことをお勧めします。
やるべきこと3:お金の準備
最後にお金、最低限の学費の準備を早めにしておくことをお勧めします。
博士課程でかかる学費は
・3年間で200万円程度
・初年度は入学金もあるため、国立大学であっても90万円程度
・2,3年目は60万円程度ずつ
が必要となります。
社会人ドクターを始めると、学業との両立のため残業時間が以前より少なくなり、給料がこれまでよりも減ることが多いです。
それに加え、会社で働き収入のある社会人ドクターは、
・TAやRAのような大学から給与をもらえる制度を使うことができない
・学振のような国からの補助金を受け取ることができない
・条件の良い奨学金を受け取ることができない
・等々
博士課程の学生に対する経済面の補助制度のほとんどを使うことができません。
その理由は、
補助制度利用の条件に、一定以下の収入であることが求められていたり、
会社側の制度として、「他の組織に雇用され給与を受け取ることは禁止する」というようなものが存在したり
することが主なものです。
このため、社会人ドクターは大きな額となる学費を全額準備しておく必要があり、
学費をコツコツと貯金もしくは家計の見直しにより年間の給与から学費分を払えるようにしておくことをお勧めします。
③まとめ
ここでは、
社会人ドクターを始めるにはどのような流れになるのか?
早めに取り組んでおいた方が良いことはなんなのか?
という疑問に対して、
①社会人ドクターを始めるまでの流れ・やらなきゃいけないこと
②社会人ドクターを始めるまでに”早めに”やるべきこと
を説明しました。
社会人ドクターをやりたいぞ!と思って動き出そうとしている方、ぜひ参考にして一歩踏み出してください!