社会人をしながら博士を取りたい!と思っているけど、キツそうな割に、実際どんなメリットがあるのか、、と不安になっている方多いのではないでしょうか。
周りで社会人ドクターはどのような評価を受けるのか?とって意味があるのか?等悩みますよね。
実際に私も、社会人ドクター入学は勢いで入ってしまったのですが、入学してから色々悩むことが多かったです。
そんな経験も踏まえて、ここでは、
- 社会人が博士取得をするメリット・デメリット
- 具体的な社会人ドクターの活かし方(経験談含む)
について説明したいと思います!
また、
社会人ドクター全般について知りたい方は、こちらの記事も見てみてください。
①社会人ドクター取得のメリット
社会人ドクターの取得には多くのメリットがあります。
ここでは、
・社会人ドクターのキャリアに対するメリット
・社会人ドクターの人脈に対するメリット
に分けて詳しく説明します。
キャリアアップ(昇進・転職)におけるメリット
社会人ドクターは、実務経験と学術的な研究を通じてキャリアパスや昇進に向けて前進することができます。
博士課程での経験を通じて獲得した論理的思考力や課題解決力は会社での業務遂行能力の向上に大きく貢献し、その結果、昇給・昇進に繋げることができます。
また、研究活動によって専門性を高めることで、より高度な職位や専門的な役割を果たす機会が広がります。
さらに、これらによって自身の市場価値が上がり、より良い(業務内容・給料)の職に転職することも可能となります!
能力(専門性+論理的思考力)の向上のメリット
社会人ドクターでは先進的な研究(少なくとも、投稿論文を出すためには誰もやったことのない研究結果を出す必要があるので)を行うため、その研究活動を通じて専門性を向上させることができます。
特に、研究分野と自身の業務分野が関連する場合は、業務経験で得た実践的な知識と、研究による先進的な知識の相乗効果を得ることができます。
さらに、博士課程における研究では高い論理的思考力が鍛えられます。
専門性・論理的思考力はともに業務遂行に大きく役立つ能力であり、これらを鍛えたことによりより高度な業務を担うことができるようになることが期待できます!
「博士」の肩書きを得るメリット
博士号は高い学術的な資格であり、専門性や研究能力の高さを証明するものです。
博士号取得者としての地位や信頼性が高まることで、研究開発関連や専門分野での仕事相手からの目が変わることが多いです。
人脈の広がりによるメリット
社会人ドクターは、専門分野にて広い人脈を持つことができるため、多くのメリットがあります。
例えば大学での博士仲間であったり、学会参加によって近い専門分野内での人脈を広げることができます。
これにより、有益な共同研究等の共同プロジェクトに繋げたり、各専門分野の仲間との交流により新たな視点やアイデアを取り入れることができます。
② 社会人ドクターのデメリット
社会人ドクターには多くのメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。
特に、時間と体力的な負担、経済的な負担、仕事と大学のバランスとストレスが重要となります。
ここでは、
・時間と体力的負担の面でのデメリット
・経済的なデメリット
・仕事と大学の調整やストレスによるデメリット
に分けて詳しく説明します。
勤務と学習の両立の負担
社会人ドクターは、会社業務と学業の両方を並行してこなさなければなりません。
これは思った以上に大変なことです。。。
会社業務の方が、定型業務メインで毎日定時帰りという場合は比較的やりやすいのですが、
繁忙期等があり一定の継続した期間でしっかりと学業にも時間を割ける状態とするのはかなり調整が難しくなります。
時には会社との関係が悪くなり、上司からよくない評価を受けてしまう可能性もあります。。
私自身はかなり理解のある上司だったため、大学の研究のための出張(最長4日間)の休暇取得等、いろいろ調整してもらえたのがとてもありがたかったです。
子持ちの方は、家事育児と仕事と大学の両立が必要でさらに負担
社会人ドクターの中には配偶者や子を持つ方もいます(私もそうでした)。
そのような方にとっては、仕事と大学の両立だけでなく、家事や子育ての負担もあります。
この場合、配偶者との調整が必要となり、
「この2年間だけ家事育児を減らしてください!」
等、一定期間配偶者に負担をお願いすることになるかと思います。
経済的な負担
社会人ドクターは、大学院などでの学費を自己負担する必要があります。
(基本的に、収入のある社会人は奨学金等の国・大学等からの金銭的な援助は受けられません)
さらに、この期間は仕事をセーブして残業時間を大きく減らすことになるため、給料としても例年より少なくなる場合が多いです。
実際に私は社会人ドクターの期間は残業時間がほぼゼロ(有給休暇を温存するためにフレックスを多用してた)だったので、
それ以前の期間と比べて給料はガクッと下がっていました。。
ただ、独身時代に多くの貯金をしていたため、なんとか経済的に破綻することなく卒業を迎えることができました。
ストレスの負担
社会人ドクターは、仕事や学業の負荷によって強いストレスを抱えることがあります。
そのためストレスの適切な管理が必要になります。
特に、学会前や審査前等の重要な期間にはとても大きなストレスがかかります。
(振り返ると私もかなり精神的にやばいところまで行っていた気がします。。)
そのため、できるだけ、大学・会社ともに良好な人間関係を保つとともに、友人との交流等ストレスを発散・放出できるようにしておくようにしましょう。
③実践的な社会人ドクターの活かし方(経験談含む)
これまでは一般論的なメリットを説明しましたが、ここからは具体的にどのようにドクターを活かすことができるかということを説明します。
社会人ドクターをとろうか悩んでいる方の多くは
・技術・研究系の職種
・理系修士卒で現在の会社に就職
・民間の大手企業
・社内ではプレーヤーの役職である20~30歳代
といった経歴が多いかと思います(私がまさにこの経歴でした笑)
私の経験も踏まえて4つの方法を説明します。
社内の業務内容への活かし方
まず、業務内容としてドクターを生かす方法として考えられるのが
・今の部署でより専門性を活かした業務につく
・ドクターの肩書きを活かして社内の別の部署に異動する
です。
まず、今の部署で専門性を活かした業務に就くという方法ですが、正直なところこれはあまり期待はできないと考えます。
そもそも今の部署に修士卒で配属されている時点で、会社としては「この部署の業務は博士を取る必要はなく、修士卒+業務経験を積むことで十分」と考えているはずです。
そんな部署でドクターが評価されることは少なく、さらに、ドクターを活かした業務に就くということは現実的ではないです。
次に、ドクターの肩書きを活かして社内の別の部署に異動するという方法ですが、これも基本的にはあまり期待できないと考えますが、ごく一部の先進的な取り組みの会社では可能であると思います。
多くの民間企業では、20,30歳代のプレーヤー社員の異動事情は
・業務を学ぶために基本的に異動はない
もしくは
・業務を学ぶために一律3~5年ごとのジョブローテーション
といった感じで、自己研鑽を活かして自分の意見を反映した異動というのはほとんどないのが実情となっています。
このため、社会人ドクターをとって、それを活かせるような別部署(例:製造部署から全く違う研究部署に異動)ということは残念ですが現実的ではないです。
ただし、ごく一部の会社では「社内公募制度」というものを採用しているところがあり、そのような会社ではドクターを活かした異動ができる可能性があります。
社内公募制度とは、
・人が欲しい部署が社内向けに公募を出す
・公募を出す場合は求人票と同じように、希望する経歴・業務経験等を提示
・それに応募した人に対して書類審査・面接等を行い採用(異動受け入れ)を決める
・基本的に応募者は上司の許可等はいらず自由に応募可能。採用された場合は引き止めることはできない
といった感じで、社内版転職制度といったものです。
この制度を使って、ドクターを活かすことができる部署から公募があった場合に応募して異動することができます。
社内でドクターを活かして異動する方法としてはこの社内公募制度を利用しない限り可能性はかなり低いですが、最初に述べた通り、この社内公募制度を採用している企業はごく一部(かつ、採用していたとしても社内でこの制度がちゃんと機能している会社はさらに少ない)ため、この方法を使える方はかなり少ないかなと思います。
なので、この方法が使える会社に勤めている方はぜひ利用すべき制度かと思います。
社内の給料アップへの活かし方
ドクターが評価されて給料アップをする方法として考えられるのが、
・ドクターを評価されて出世
・ドクターをとったことによる資格手当て
です。
まず、ドクターが評価されて出世することについてですが、これは「②-1業務内容への活かし方」で説明した通り、今の部署に修士卒で配属されている時点で会社としては博士は不要と考えていると考えているはずで、ドクター取得が評価される可能性はかなり低いです。
ドクターを活かして社内異動をして評価されることもありますが、これも先ほど述べた通り、この方法を使える方は社内公募制度を採用している(かつその制度がちゃんと機能している)ごく一部の会社に勤めている方のみとなります。
次に、ドクターをとったことによる資格手当てですが、これは私の知る限りでは民間企業で採用されている会社は聞いたことがないです。
国立の研究機関のように組織全体としてドクターが重要な資格となるような場合はそのような手当がある機関は聞いたことがあります(羨ましい限りです)。
転職に活かす
これまでで、同じ会社に勤めながらドクター取得を業務内容・給料UPに活かすのがなかなか厳しいことをお話しして心が折れてしまう方もいたかもしれません。
でも、ドクターを業務内容な給料UPに活かす方法として、博士という肩書きを活用した転職をするという方法があります。
実際に転職市場を見てみると博士保持者を対象とした求人は意外と多く、博士保持者をメインターゲットとした転職エージェント(アカリク等)も存在するくらいです。
求人で博士保持者を欲しがっているということは博士を取得したことを評価しているということであり、また、博士を活かした仕事をして欲しいと考えているということです。
なので、ドクターを活かした業務内容に移るために転職という方法は有効です。
また、給料面ですが、転職時の給料交渉次第ではありますが、博士を持っているのであれば同期入社の博士所持者と同等の給料となることが多いです。つまり、3つ年上の人の標準給料と同じになるため、給料は今より上がることが多いということです。
なので、ドクターを活かして給料UPをするという目的でも転職という方法は有効となります。
実際に私はドクター取得後に転職をして、
・博士所持者を募集している、博士を活かした業務→博士を活かした業務に就く
・同期修士卒の標準給料に対して博士取得分を考慮して加算+α→博士を活かして給料UP
を実現することができました。
そのほかのパターン
そのほかのパターンとして、シンプルにドクターの肩書きを持つことで満足感を得ることです。
例えば研究職であれば、博士保持者と接することが多いので、自身も博士の肩書きを持って立ち回れることが嬉しい・それで自信を持って仕事ができるということはとてもいいことだと思います。
実際に私自身もドクター取得の初めのモチベーションは「シンプルにドクターが欲しい!」というものでした。
社会人ドクターは究極の自己研鑽だと思いますし、それで得られた肩書きに自己満足するというのもとても良い活かし方だと思っています(本当にそう思ってます!)。
③まとめ
いかがだったでしょうか。
ここでは、
- 実際に博士号取得によるメリット・デメリット
- 経験談を含む博士号の活かし方
について説明しました。
博士号はシンプルに「取りたい!」という気持ちでとって良いものだと思いますが、それをその取得に伴う苦労に見合ったメリットを得るためには、社内制度だけでなく、転職等の社外にも目を向けたらいいなと思っています。
私は実際に転職活動をしてみると、案外、博士を評価してくれるところはあるんだなーと思い、博士をとってよかったなと本当に感じました。
みなさん、ぜひメリットを明確に持って、社会人ドクターに挑戦してください!