社会人ドクターを始めたいけど、実際に博士課程ってどんな流れ・関門があるのかわからないという方多いのではないでしょうか。
社会人ドクターというのは、大学に同期や先輩がおらず、博士課程がどのような流れなのか情報が得られない・かなり限られてしまいます。
ここでは、社会人ドクターや一般的な博士課程の
・卒業要件
・各種関門
・私の実体験に基づいた3年間の進め方スケジュール感
をご説明します!
社会人ドクター全般について知りたい方は、まずこちらの記事を見てみてください。
①一般的な博士課程の卒業要件とイベント(関門)を紹介
まずは、一般的な博士課程の流れを説明します。ここで「一般的な」としているのは、卒業要件やイベントの内容や時期というのは専攻ごとに異なる場合があり、同じ大学内でも専攻が違えば要件等は違うことがあります。
なので、ここでは私が調べた色々な大学・専攻での情報から平均的なものと考えられる要件等を紹介します。
単位
まずは卒業のための単位が必要です。
昔は博士課程だと講義はほぼなくて研究だけというイメージでしたが、最近では博士課程でもしっかり単位を取る流れになっています。
主な内容は、
・講究単位(ゼミ等、研究活動をしている課程で自動的に入ってくる単位)
・専門科目(いわゆる専攻の座学講義)
・教養科目
があり、全部で20~30単位程度の取得が求められます。
最近はリモート講義が普及しているとはいえ、専門講義等は平日の日中に実施される場合が多いので、会社業務との調整が必要になる項目となります。
論文投稿
博士課程といえばやはり投稿論文の執筆が求められます。
ただし、その内容については専攻ごとに厳しさが異なり、
・英語の投稿論文をファーストオーサーで3報以上
・ファーストオーサーの論文を1報(できれば英語)
・ファーストオーサーじゃなくてもいいから1報出せばいい
といった感じでかなり大きな幅があります。
国際学会
・国際学会での発表が必須
・国際学会での発表は必須ではないけど、しなかった場合はそれと同等の学内発表をする
等、必須だったり、実質必須としたいけどできなかった場合の救済措置があるような専攻があります。
博士論文の執筆および審査
最後にして最大の関門である博士論文の執筆および学位審査です。
博士論文は、修士論文までとは比較にならないほどの論文としての完成度が求められます。
そのため、論文執筆には多くの博士学生は半年くらいの期間を充てています。
また、審査については、
・中間審査(博士課程2年くらいに実施。次年度で卒業できるか予備的に審査される)
・予備審査(博士課程3年に実施し、当年度で卒業できるか予備的に審査される。実質これをクリアするのが最大の難関ともいわれる。ただし、予備審査がない選考もある)
・公聴会
・最終審査
の4つのイベントが行われることが多いです。
TOEICスコア
研究とは関係ないですが、博士に相応する英語力を有することを示すため、TOEICのスコアが求められることがあります。
点数は一概にはいえないですが、730点あたりがラインとなることが多いです。
②実際の博士課程のスケジュール感を紹介(実体験を踏まえて)
それでは、ここまで説明した卒業要件+各種イベントの時期+イベントをクリアするためにいつまでにどのくらい研究が進んでいるべきか等のスケジュール感について説明します。
これは、私の実際の経験+もっとこうすればスムーズにできたなという反省も活かして作成しているため、ぜひ参考にしていただければと思います。
1年目
まず1年目にやるべきことは
・必要な講義をとってしまう
・まずは研究の方針を決めてしっかりスタートする
です。
まず1年目に必要な講義をとってしまうというのは、多くの修士課程と同じ方針で、後半に研究に専念するために早めできるものはクリアしてしまうのが後々のためだと思います。
ざっくり、1クオーターで3,4個くらい取れば必要な講義の単位(講究等は除く)は取れてしまうかなと思います。
ただ、講義は平日の日中に実施していることが多いので、社会人にとっては時間を確保するのが難しい可能性もあります。できるだけリモートで実施している講義を取るのがいいですね。
次に、研究の方針をしっかり決めていいスタートを切るのがこの1年目の一番大事なことかなと思います。
博士課程の研究というのは、学部や修士課程までとは違い、研究テーマだけ決めて、その中身や進め方、切り口は自分で考えて決めなくてはいけないという場合が多いです。
そのため、「自分の博士研究は、このテーマをこの切り口で進めるんだ!」という方向性をまず定めることが初めの大きな課題であり、これがしっかりできると、2年目以降に研究を進めるための活動に専念でき、成果をしっかり出していけるようになります。
イメージとしては、1年目の終わりくらいに、自分のオリジナルの研究成果で国内学会発表くらいができるようになるといいかなと思います。
2年目
2年目は、オリジナリティーのある研究を進めて投稿論文のネタを作る年になります。
2年目のうちに英語の投稿論文を1報は出せるといいですね。できれば査読論文付きの国際学会に出られると、一つのネタで投稿論文と国際学会という博士課程の中の大きなハードルを一度にこなせていいかと思います。
私も査読論文付きの国際学会に出る予定だったのですが、色々あって学会自体が中止となり、このやり方はできないというトラブルが起きてしまいました。。
なので、2年のうちに論文を書いて、3年の初めに投稿するというスケジュールで進めることになりました。
3年目
・論文や学会等、成果となるものを残す
・審査の準備や博士論文の執筆
にかける時間が多くなります。
3年目の中盤からは博士論文の執筆にほぼ専念することになり、
通常の3月卒業の方であれば年末くらいから、
9月卒業の場合は6月くらいから
公聴会等の最後の関門が始まります。
さらに、予備審査がある方はもっと前に大きな関門があるので、そのための準備もあると考えると、3年目に研究ができる期間はかなり限られていますね。
③まとめ
ここでは、社会人ドクターの流れと、実体験に基づいた3年間のスケジュール感を説明しました。
こう見ると、1年目は講義をしっかり取る,3年目は博士論文執筆等に時間が取られるため、2年目にどれだけ会社との時間を調整して研究をしっかり進められるかが、社会人ドクターにとっては重要になるということがわかりますね。
「社会人ドクターはとにかくきつくてほとんどの人が断念する!」といったような都市伝説を信じて諦めかけていた方、今回ご紹介したスケジュール感等で具体的なイメージがつき、
「自分でもできるかも」
と思っていただければ幸いです。
こんな私でも(3年半かかりましたが)なんとかできました。
ぜひ社会人ドクターに挑戦してください!
社会人ドクター全般の説明についてはまずこちらの記事をご参考にしてください!