社会人ドクター取りたい!って思ってるけど、「社会人ドクターはきついよ!辛いよ!」「絶対途中で断念するよ!」とか言われることが多いと思います。
私も社会人ドクターを取り、少し延長して3年半かけてなんとか卒業していて、その苦労は身に染みています。。
ここでは、私が社会人ドクターの経験を踏まえて、
- 社会人ドクターとは
- どこがきついのか
- どうやれば乗り越えられる/楽になるのか
を説明します。
社会人ドクター全般について知りたい方は、まずこちらの記事を見てみてください。
①社会人ドクターとは?私が挑んだ理由とその結果
社会人ドクターとは、
「社会人として働きながら、大学の博士課程に学生として所属して博士号の取得を目指している人」
のことを言います。
社会人として働きながら博士号を取得する方法は主に二つあり、
- 学生として大学に入り、博士課程を修了する(基本的にこれを社会人ドクターという)
- 研究職等で会社で実施した研究成果(論文投稿)を使って、論文ドクターとして取得する
です。
ただ、2の論文ドクターとして博士取得ができるのは、現時点で研究職として博士と同じような研究を行っている人だけで、そうではない多くの人は1の学生として博士課程を修了する方法(社会人ドクター)をとることとなります。
私は博士を取得したいと思った時点では、会社で研究活動は全くしておらず(研究職ではなかったので)、社会人ドクターとして働きながら大学に所属し研究を行う道を選びました。
私は、新規事業関連の仕事をしたいと考えており、そのために、
技術職としての事業の経験
にプラスして、
新しい技術を扱う&さらに技術を高める専門家としての博士
を自身の強みにしたいと思い、博士取得を目指すことにしました!
結果として少し期間を延長して3年半で無事博士課程終了し、現在は
・やりたかった新規事業関連の仕事に転職!
・転職の際に博士保持者であることが評価されて給料アップ!
となり、とても良い結果となっています。
(とても充実した日々を過ごしています!)
ただ、社会人ドクターは大変なことも多くありました。
きつかったことの詳細について次項以降で詳しく説明します。
②社会人ドクターがキツいポイント5選
まずは、そもそも社会人ドクターでどんなポイントがキツいのか挙げてみます。
第一に博士課程自体が大変
まずは、社会人ドクターであるかどうかに関わらず、博士課程自体がかなりハードです。
研究成果を出して博士課程の卒業要件をクリアするのはかなり労力のいるもので、みなさんも学部・修士の研究室で博士課程の先輩が苦労していたのをみていた方も多いのではないかと思います。
学費がかかる
博士課程には結構な学費がかかります。
ざっくりですが、3年間で卒業できた場合でも、国立大学で200万円,私立大学では300万円程度かかります。さらに、交通費や学会参加費などを考えると、プラス50万円くらいはかかるものとして考えていた方がいいかと思います。
国立大学の方が安いとはいえ、なかなかの負担ですよね。
時間がかかる
社会人ドクターで、必要な講義や研究はいつやるのか?
多くの方が、有給休暇,フレックス退勤後や休日を想定しているのではないかと思います(実際私もそうでした)。
つまり、これまで余暇として使っていた時間の多くを大学のために使うこととなります。しかもそれが3年(もしくはそれ以上)続くことになります。
最近では講義やゼミをオンラインで実施できるようになっており、社会人学生の負担をグッと減らしてくれるような仕組みもできているのでぜひ活用したいですね。
人間関係も大変
社会人ドクターをしていると、大学の先生,会社の上司/同僚と多くの調整を行う必要が出てきます。
社会人としての都合を考慮してくれる先生,社会人ドクターを全力で応援してくれる会社の上司や同僚に囲まれているのが理想ですが、実際はどうでない場合が多いかと思います。
いかに人間関係の調整をうまくやり、効率よく・時間を確保して博士課程に向き合えるかというのがとても大事になるかと思います。
”博士”を取ること自体に価値があるのかわからないことがある
社会人ドクターは、博士を取るまでやり切るのに苦労が大きいです。
しかし、博士取得によってどれほどの価値が自分にあるか、明確にわからないことがあることがとてもキツいところです。
私自身、「博士を取りたい」という熱意がメインででスタートした社会人ドクターですが、その途中で、「これだけ苦労する価値はあるのか。。」「これだけプライベートを犠牲にしてなんの意味があるのか。。」と途中断念すべきか悩んだことがあります。
これは、博士取得によってどのような価値がるのか明確にわかっていなかったことが原因ですが、、自分だけでこれを解消することはかなり困難なことです。
博士の価値について、市場をよく知る人にその価値を相談することがとても重要となります。
②できるだけ楽に社会人ドクターを乗り切るには?(経験談含む)
これまではどんなポイントがキツいかを説明しましたが、ここからは具体的にどのようにしてキツさを軽減・楽にすることができるかということを説明します。
博士課程自体がきついかどうかは研究室選びが重要!
博士課程自体の大変さの要因となるのは、卒業要件と同じで
- 研究成果を出すこと
- 投稿論文を書き上げること
- 学会発表をすること
- 学位論文(博士論文)を書き上げること
だと思います
これらは「博士課程なら自力で乗り越えなければいけない!」と思うかもしれませんが、できる限り楽に乗り切りたいものですよね
そのために最も重要なのが、「研究室選び」です!
みなさん、「自分の興味」だけで研究室を選ぼうとしているかもしれませんが、時間の限られる社会人ドクターにとっては、「いかに博士を取りやすいか」というのもとても重要となります
具体的にいうと、
- 成果が出やすい分野であるか?
- 先行研究が充実しているか?
- 先生の面倒見が良いか?
- 卒業要件は大変そうか?(これは研究室というよりは大学・専攻ごと)
という点にも注目が必要です。
まず、成果が出やすいか・先行研究が充実しているかについてですが、これは自分がやりたい研究テーマに類似した研究に関してその研究室でどのくらい論文を出しているかをみるとわかります。
自分がやろうとしている研究分野に関して、直近でその研究室でアクティビティが高く、多くの論文を出しているようであれば、研究室でその研究分野に対する注目度が高く成果が出しやすいと言えますね。
次に、先生の面倒見がいいかについてですが、これは所属学生に直接聞くのが確実です。
大学の先生というのは、教育者というよりはやはり研究者であり、面倒見についてはかなり個人差があるのが現実です。なので、先生本人が「うちは面倒見がいいよ」といっていても、実際はほぼ放置状態というのも大いにあることです(しゃべりがうまい先生も多いので騙されちゃダメです!)
なので、大学の専攻説明会等に参加し、研究室訪問をして学生に直接状況を聞いて判断するのがいいと思います。
また、研究室内の博士課程の先輩や研究員の方等、他にも面倒を見てくれるような方がいるかみるのもとても重要だと思います。
次に、卒業要件が大変そうかという点についてですが、これは専攻のシラバス等をみることでわかります。
これは通常WEB上で誰でも(学外の人でも)見れるようになっています。
卒業要件は「大学ごと」ではなく「専攻ごと」に決められています。なので、同じ大学でも専攻が違うと卒業要件が全く違うということもよくあります。
私が知ってる範囲でも、
- 厳しいところでは 論文を3報出さなきゃいけない(もちろんfirst authorで)
- 楽なところでは論文を1報でよい。しかもfirst authorじゃなくていい。
というくらいの違いがあります(どちらも一流国立大学でです!)。
もちろん研究成果として多くの論文を出すことが望ましいことではありますが、「必ず3報出さなきゃダメ」というのと「卒業要件にはなってないけど、頑張ってたくさん出したいな」というのでは精神的な負担が天地の差ですので、要件が楽であることはとても重要だと思います。
きつい作業を楽するためのサービスを活用する
次に、研究生活の中の細かい部分を楽にしてくれるサービスの活用をおすすめしています。
具体的には、
- 論文を読む
- 投稿論文を書く
- 学会資料作成
- データ整理
等です。
まず、論文を読むことについてですが、ここでは英語論文を対象とします。
英語の得意不得意には個人差があると思いますが、ほとんどの方は英語で読むよりも日本語で読む方が早いし理解しやすいかと思います。
なので、翻訳ソフトを用いて日本語にして読んでしまうのがとても楽です。
最近の自動翻訳技術はものすごく、かなり自然な日本語にしてくれます。
おすすめはDEEP Lというサービスで、無料でもかなり使えるのですが、一度に翻訳してくれる文字数が限られており細かく分けて翻訳する際に手間とストレスがかかるため、有料版を使用するのがおすすめです。
次に、投稿論文(英語)を書くことについては、日本語で論文を書いてしまい、英語化するのは自動翻訳+英文添削サービスを使用してしまいましょう。
研究成果がでれいれば、日本語で論文を書くことはそこまで苦ではないと思いますが、それを英語の論文とするにはかなりハードルが高くなるかと思います。そこで、サービスを活用してその部分を楽することで負担をかなり減らすことができます。
最後に学会資料作成やデータ整理についてですが、これは基本的に自分でやった方がいいと思いますが、これも楽をしたいという場合はクラウドソーシング等により外注してしまうというのも有効な手段です。
これらはお金は多少かかってしまいますが、研究生活をかなり楽にしてくれます!
- サービスにお金をかけて楽をして早く博士課程を卒業する
- サービスにお金をかけない代わりに卒業延長をする
のどちらかであれば絶対に「サービスにお金をかけて楽をして早く博士課程を卒業する」方がおすすめです!
ただでさえ3年というかなり長い期間を必要とするのに、それをさらに1年・2年長くするというのは苦労する期間が延びて精神的にかなりキツいですし、学費自体もその分かかる(おそらくサービスに係る以上に)ので、ぜひサービスを活用して3年で確実に卒業することをお勧めします!
③キツいと思った時に乗り切るためには
これまで、できるだけキツさを軽減して楽にする方法を説明しましたが、それでも社会人ドクターをやっている中で必ず「キツいな」と思う時期がくるはずです。
そんなキツい時を乗り切るための方法を紹介します。
博士を取った後のイメージ(メリット)をしっかり持つ
やはり、博士課程を乗り切るために一番重要なのは、「博士を取った後のいいイメージをしっかり持つ」ことであり、キツさを乗り切る意義を自分の中で持ち続けることだと思います。
博士をとることで
- やりたい仕事をする
- 今の仕事でもっと専門性を活かして充実したい
- 出世したい
等のメリットを得られるというのがモチベーションになりますね。
逆に、「博士とっても実際何に役に立つのか。。。」というような迷いがあると、博士課程で辛くなった時にモチベーションがかなり下がってしんどくなってしまいますよね。。
なので、ぜひいいイメージ・博士取得のメリットをしっかり持って乗り切りましょう!
社会人ドクターのメリットについてこちらの記事にまとめていますので、そちらも参考にしてぜひいいイメージを自分の中に持ってください!
また、モチベーションをしっかり保ち続けられるように+苦労を減らすために、
”社会人ドクターに近いうちに挑戦したいと思ったとき”
にやっておくべきことをこちらの記事にまとめていますので参考にしてください!
きつい状況を共有できる仲間を作る
もう一つ、キツい状況を乗り切る仲間がいることもとても重要です。
社会人ドクターというのは、研究室の学生と比べてかなり年上なことが多く、かつ、研究室に行く頻度も少ないため、研究室内で友達を作るというのはかなり難しいと思います。
なので研究室内で友達がおらずフランクな相談等をする相手がなかなかいないというのが実際です。(私自身もそうでした。。)
研究内容については教員や研究員の方と相談できますが、やはり同じ社会人ドクターとして頑張って辛いことを乗り越えようとしている仲間がいると、色んな相談ができて精神的な安心につながるなと思います。
実際に私の周りに社会人ドクターやその経験者がおらず、相談できる人がいなかったため、途中かなりキツい時期を過ごしました。。
なので、社会人ドクターをやろう/やっているという人に情報提供をしたいなと思ったのがこのサイトを作るきっかけとなりました。
このサイトがいい情報提供の場、そして、社会人ドクター仲間の情報交換・交流の場も提供することができたらなと思っています。
④おすすめの書籍
この記事や他のサイト内記事で社会人ドクターについて説明していますが、
やはり一つのまとまった書籍を読むことで得られる情報も大きいです。
おすすめのものとしては、
実際に社会人ドクターに特化して解説+背中を押してくれるこちらの書籍をぜひ読んでみてください。
また、一般的な博士課程の流れや課題などを網羅的に説明してくれるこちらの書籍もおすすめです。
こちらは2023年時点で第6版まで版を重ねているロングセラーで、世界中の博士課程の学生にとってのバイブル的存在となっています。
博士号のとり方[第6版]―学生と指導教員のための実践ハンドブック―
博士号のとり方[第6版]―学生と指導教員のための実践ハンドブック―
⑤まとめ
ここでは、社会人ドクターの概要と、どこがキツいのか,どうすれば楽にできるか,どうすれば乗り切れるかについてお話ししました。
キツさについて具体的には、
- キツさのメインは,博士課程自体・お金・時間・人間関係
- 研究室選びでキツさが決まる
- 楽することができるツールを活用する
- ドクターを取った後のイメージを持ってモチベーションを保つ
- 仲間を作る
です。
この点しっかり対策して社会人ドクター取得の夢を叶えましょう!!